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フィリピンのキャッシュレス最新事情!GCashなどの主要な決済を紹介

フィリピンでは、スマホひとつで支払いが完結するGCashなどのキャッシュレス決済の普及が急速に進んでいます。
近年、訪日フィリピン観光客は増加傾向にあります。実際、ASEAN主要6カ国からの訪日客数の合計は430万4,200人と過去最高を更新し、タイに続いてフィリピンが多く、前年比でみると伸び率はフィリピンが31.6%と最も増加しています。
そのため、観光地を中心とした施設や店舗では、訪日フィリピン観光客の決済ニーズの最新動向を把握し、適切な対策を図ることが重要です。
本記事では、フィリピンのキャッシュレス事情から観光客の特徴、キャッシュレス決済導入のポイントまで、最新情報をわかりやすく解説します。
フィリピンの最新キャッシュレス事情

コロナ禍を契機に、現金接触を避けたい意識の高まりもあり、フィリピンではキャッシュレス決済が急速に拡大しています。特に都市部を中心に、QRコード決済やクレジットカード決済を導入する店舗が増加しています。
フィリピンでは、個人の銀行口座保有率は従来高くありませんでした。BSP(フィリピン中央銀行)の最新データによると、2023年末時点で金融機関口座保有率は 31.8%、モバイルマネー口座保有率は 4.5%と、合わせて約 36.3% にとどまっています。一方で、スマートフォンの普及率が高いことから、銀行口座を持たない人でも手軽に利用できるモバイル決済がキャッシュレス化の主要手段として受け入れられやすい土壌があります。
ここでは、フィリピンの主要決済サービスの普及率や特徴、政策や今後の展望などを解説します。
主要決済サービスの特徴と普及率
BSP(フィリピン中央銀行)によると、フィリピンのキャッシュレス決済普及率は、2018年は10%だったのに対し、2022年時点で42.1%と普及しています。
特に2020年から2022年にかけて顕著で、2021年から2022年で決済全体の電子決済比率が30.3%から42.1%に跳ね上がりました。この急速な普及の背景としては、新型コロナウイルス感染症の拡大により、現金利用を避ける社会的な動きが強まったことが大きな要因です。
なお、フィリピンのキャッシュレス決済サービスは、主にスマートフォンを利用したモバイル決済が中心です。
以下の表は、主要決済サービスの種類と概要をまとめたものです。
| 種類 | 主なサービス | 主な特徴 |
| モバイルウォレット/QRコード決済 | GCash | 幅広い生活シーンで利用可能。フィリピンでもっとも普及している。 |
| 現金決済 | フィリピンの現金決済では、主に「フィリピンペソ」の通貨を使用 | フィリピンでは依然として根強く利用されている。 |
| クレジットカード | Visa、Mastercardなど | 国際ブランドの信用性と互換性が強み。法人・富裕層利用中心で、普及は限定的。 |
| 共通QRコード規格 | QRPh | 国家標準のQRコード。相互運用性に優れ、事業者間の決済互換を推進。 |
共通QRコード規格とは、複数の決済サービスのQRコードを1枚にまとめる統一規格のことです。これにより、1枚のQRコードを店頭に置くだけで、複数社のキャッシュレス決済に対応できるようになります。
キャッシュレス化の政策と今後の展望
フィリピン中央銀行(BSP)は、「Digital Payments Transformation Roadmap(DPTR)」を策定し、2030年を目標にキャッシュレス社会の実現を目指しています。
また、国家 QR 規格「QRPh」を導入し、EMV 準拠の共通 QR コード決済の普及を進め、複数決済事業者間での相互運用性を高める施策を実施中です。
地方都市の市場やストリート市場(パレンマーケット)への導入促進も強化されており、LGU(地方自治体)と連携したキャッシュレス化推進が各地で進行しています。
以下は、最新のキャッシュレス化の政策と展望です。
フィリピン中央銀行(BSP)は2025年までに銀行のデジタル化ガイドラインを強化し、全国の決済取引の大部分をデジタル化する計画を掲げている。
国家標準QRコード「QRPh」を導入し、異なる決済事業者間の相互運用性を高めている。
NFCを活用した非接触決済が広がり、最大手フィンテック企業GCashなどとの連携が進んでいる。
地方や中小店舗へのキャッシュレス浸透促進、デジタルIDの活用による利便性の向上とセキュリティ強化を目指している。
東南アジア諸国との越境決済連携が進み、多国間での即時決済や取引に対応可能な高度な決済環境の整備が進んでいる。
こうした政策により、地域の金融統合が促進され、キャッシュレス化が促進される見込みです。
訪日フィリピン観光客の特徴

訪日フィリピン観光客は、近年増加傾向にあり、観光目的での訪日が多くなっています。
ここでは、訪日フィリピン観光客の特徴を解説します。
訪日観光客数と年齢層
日本政府観光局(JNTO)によると、2025年1月~6月の訪日フィリピン観光客は44万8,100人です。
前年同期間の40万1,767人に比べると11.5%の伸び率です。
コロナ前の2019年1~6月(29万5,120人)と比べても上回っており、訪日フィリピン観光客数は増加傾向を示しています。また、年齢層は男女ともに20代〜40代が多くなっています。

出典:法務省「出入国管理統計統計表(2011年~2024年)」より、日本政府観光局(JNTO)が作成
旅行目的
訪日フィリピン観光客の旅行目的は観光が多くなっています。
日本政府観光局(JNTO)によると、フィリピン人訪日客は文化体験やショッピング、グルメを目的に訪れることが多いです。特にショッピングやグルメへの関心が高く、これらを楽しむために滞在期間を長くする傾向があります。
また、家族や友人との団体旅行も多く、滞在中は複数の観光地を巡るケースが多いです。さらに、日本の地方都市への関心も増えており、多様な旅行先の開拓が進んでいます。
リピーターも増加しており、旅行商品や体験の多様化が求められる状況です。
支出傾向
訪日フィリピン観光客の支出傾向について、2025年4〜6月期のデータをもとに解説します。
観光庁のインバウンド消費動向調査によると、この期間の訪日フィリピン人旅行消費額は398億円で、前年同期比7.6%の増加となりました。
1人当たりの平均旅行支出は約16万9,828円で、その内訳は以下のようになっています。
| 宿泊費 | 5万9,773円 |
| 飲食費 | 3万2,919円 |
| 交通費 | 1万5,306円 |
| 娯楽等・サービス費 | 7,875円 |
| 買物代 | 5万3,600円 |
| その他 | 355円 |
費目別では宿泊費が最も大きく、平均5万9,773円が消費されています。
次いで買物代が5万3,600円、飲食費が3万2,919円となっており、これら三つが大部分を占めています。
消費傾向としては、ショッピングや飲食など体験型消費に加え、宿泊費の割合が大きいのも特徴です。
今後の経済動向や為替レートの変化、滞在形態の多様化によって、支出傾向は変化する可能性があります。
キャッシュレス利用の実態
訪日フィリピン観光客は、母国でキャッシュレス決済が普及しつつあり、日本でもキャッシュレス利用が今後拡大することが予想されます。
一方、日本のキャッシュレス決済環境は海外と比較すると遅れており、キャッシュレス決済の利用に不便を感じる訪日フィリピン観光客が増える可能性もあります。
特に地方や小規模店舗では対応が追いついていない例も多く、さらなるキャッシュレス決済環境の整備や、多様な決済手段の導入・周知が課題です。
【関連記事】日本のキャッシュレス決済の変化と動向!店舗の集客・売上アップに向けた対策とは?
フィリピンのモバイル決済サービスを紹介

フィリピンでは、キャッシュレス決済の中でもモバイル決済サービスが特に普及しています。
ここではモバイル決済サービスの概要と利用シーンなどを解説します。
モバイル決済サービスの概要と利用シーン
| サービス名 | サービス開始年 | 利用可能シーン |
| GCash | 2004年 | 店舗でのQRコード決済、オンラインショッピング、送金、公共料金の支払い、プリペイド携帯のチャージ、ATMからの現金引き出し。地方の小規模店舗やローカルマーケットでも広く利用。 |
| Maya | 2017年 | オンラインショッピング、デビットカードでの店舗決済、公共料金支払い、チャージ、送金。特に都市部のショッピングモールで多く利用される。 |
| GrabPay | 2018年 | 配車サービスの支払い、フードデリバリーの代金支払い、飲食店や一部店舗での決済。配車アプリと連動し、日常利用に便利。 |
中でも、GCashは、ユーザー数と加盟店数で国内トップシェア(※)を有し、日常生活のあらゆる場面で活用されています。
※GCashのユーザー数と加盟店数
GCashのユーザー数:約9,400万人
加盟店:約600万
出典:GCash公式サイト
Mayaはオンライン決済に特化し、無料でデビットカードを発行できるのが特徴です。GrabPayは日常の移動や食事に便利です。
これらのモバイル決済サービスは、フィリピンのさまざまな生活シーンを便利にし、支えています。
日本国内での対応について
日本国内でのフィリピン発モバイル決済サービスの対応状況は、限定的ながら徐々に進んでいます。
GCashは日本企業とも連携し、販路拡大を目指しており、ECサイトや実店舗での決済導入が進みつつあります。特にオンラインショップや越境ECでの利用が増加中です。
2025年9月にはGCashがMastercardやAlipay+と提携し、NFCを活用した非接触決済サービスを開始し、世界中のMastercard加盟店でも利用可能になりました。Alipay+は、アジア各国の主要電子ウォレットをまとめて利用できる国際的な決済ネットワークで、GCashもその対応ブランドのひとつです。日本国内でもAlipay+を通じてGCash決済を受け付けられる店舗が増えつつあります。
関連記事:Alipay+とは?訪日観光客に対する便利な決済機能と店舗での導入メリットを解説
しかし、現時点では日本の中小店舗や地方では対応が十分とは言えず、多くの訪日フィリピン観光客が日本の既存決済サービスを利用しています。
訪日フィリピン観光客の需要に対応するためには、店舗側の決済端末の多国籍対応や多言語化の推進が必要です。
訪日フィリピン観光客に対応したキャッシュレス決済導入のポイント

増加する訪日フィリピン観光客の需要に対応するためにも、キャッシュレス決済導入は欠かせません。
ここではキャッシュレス決済導入のポイントについて解説します。
キャッシュレス決済導入のメリット
キャッシュレス決済導入を進めるにあたり、フィリピンの決済サービスに対応できる環境を整えることで、訪日フィリピン人観光客が母国と同じ感覚でスムーズに支払えます。
さらに、店舗側には以下のようなメリットもあります。
| メリット | 解説 |
| 利便性向上 | 現金を持たずにQRコードやスマホでスピーディに決済可能。 |
| 集客力アップ | 訪日フィリピン観光客の来店促進が期待できる。 |
| 業務効率化 | 会計処理時間の短縮によりレジ待ちが減少し、店員の負担が軽減される。 |
| 現金管理コスト削減 | 現金の受け渡しや釣り銭準備の作業が減り、盗難・紛失リスクを軽減できる。 |
| 売上データの活用 | タイムリーな売上情報を把握でき、分析やマーケティングに活用できる。 |
キャッシュレス導入は訪日観光客対応だけでなく、日本市場での競争力向上にも直結します。
多様な決済手段の受け入れは、店舗経営の成長と効率化を促進するためにも欠かせません。
キャッシュレス決済導入の注意点
訪日フィリピン観光客に対応したキャッシュレス決済導入の推進にあたり、以下のような点に注意する必要があります。
| 注意点 | 解説 |
| 導入・維持コストの把握 | 決済端末導入や保守、決済手数料が発生。初期費用の負担に注意が必要。 |
| 安定した通信環境 | ネット環境の不安定さが決済速度に影響。安定した回線の準備が不可欠。 |
| 運用負担 | 多様な決済方法の把握・管理、スタッフの操作教育が必要。 |
| セキュリティ対策 | 不正利用防止や個人情報保護のため、安全な決済システム運用が不可欠。 |
| 言語対応 | 利用客に対して日本語以外の説明やサポートが不足しやすく、外国語対応や案内強化が求められる。 |
導入する際は、まずフィリピンの主要な決済サービスを優先し、徐々に対応を広げることが現実的です。
これにより無駄なコストを抑えつつ、訪日フィリピン観光客の利便性を確保します。
利用率を高めるポイント
訪日フィリピン観光客のキャッシュレス決済利用率を高めるためには、対応ブランドを店舗内外でわかりやすく表示することが大切です。
来店者がすぐに利用可能な決済方法を把握できる環境を整えることは、安心感につながります。スタッフによる利用案内や割引サービスなども利用促進に有効です。
ただし、利用者が少ない決済手段を増やしてしまうと、コスト増につながる可能性があります。
顧客目線で分かりやすく利便性の高い決済環境を提供しつつ、経営効率とコストバランスを考慮した戦略的対応が重要です。
対応ブランドの選定
訪日フィリピン観光客に対応する決済ブランドを選定する際には、現地での利用実態を踏まえることが重要です。
フィリピンではスマートフォンの普及に合わせ、GCashやMayaといったモバイル決済の利用が急速に広がっており、「送金」「光熱費の支払い」「オンラインショッピング決済」などに幅広く活用されています。
中でもGCashは、日本を含む海外での利用環境を拡充する動きを強めており、日本国内ではAlipay+との連携を通じて利用できる店舗が拡大しています。
Alipay+は、アジア各国の主要電子ウォレット(Alipay、Kakao
Pay、Touch ’n Go
eWallet、TrueMoney、GCashなど)を共通の仕組みで受け入れられる国際決済ネットワークです。
店舗側はAlipay+を導入することで、GCashをはじめとした複数の海外ウォレットに一括対応でき、訪日観光客への利便性を高めることができます。
一方、クレジットカード利用も一般的で、ブランドはVisaやMastercardなどの利用が多いです。
訪日フィリピン観光客が安心して買い物できる決済環境を整えることで、店舗の集客力と顧客満足度の向上につながります。
Alipay+については、以下の記事でも詳しく紹介しています。
Alipay+とは?訪日観光客に対する便利な決済機能と店舗での導入メリットを解説
まとめ
訪日フィリピン観光客の増加に伴い、キャッシュレス決済への対応は店舗経営における重要課題となっています。
特にフィリピンではスマートフォンの普及とともに、GCashをはじめとしたモバイル決済の利用が急速に広がっています。こうした決済手段に対応することは、訪日フィリピン人観光客の利便性向上に直結し、集客や売上アップにも貢献します。
フィリピンを含むアジア圏の多様なモバイル決済へ効率的に対応する方法として、Alipay+対応の決済サービスを導入する店舗が増えています。
Alipay+はアジアの複数国のスマホ決済ブランドをまとめて取り扱えるため、GCashにもスムーズに対応できます。
こうした Alipay+ の仕組みを利用できるサービスの一つとして、「IntaPay」ではアジア各国の決済ブランドを一括で導入でき、訪日客向けの決済環境を効率的に整備することが可能です。
店舗のキャッシュレス対応を強化したい場合に、有効な選択肢となるでしょう。
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※本記事は執筆時点の情報に基づいています。最新の制度改正や詳細については公式情報をご確認ください。
