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【2025年版】日本のキャッシュレス市場と政策の歴史を振り返る!未来の展望まで解説
コロナ禍や急速なデジタル化の進展を経て、日本のキャッシュレス社会は今大きな転換点を迎えています。
近年は政府が主導し、全国で多様なキャッシュレス推進策が実施されており、「EXPO 2025 大阪・関西万博」では全面キャッシュレス化が話題を集めました。
キャッシュレス市場が年々拡大するなか、「自社でもキャッシュレス決済の導入や拡充に踏み切るべきか」悩んでいる事業主様も多いのではないでしょうか。
本記事では、日本のキャッシュレス政策の歴史を振り返りつつ、今後の市場展望や解決すべき課題について解説します。
日本のキャッシュレス決済比率は42.8%(2024年)に到達 ― 政府目標を前倒しで達成
政府が掲げていた「2025年6月までにキャッシュレス決済比率を40%前後に引き上げる」という目標は、予定を1年前倒しして2024年に達成されました。
出典元:経済産業省「2024年のキャッシュレス決済比率」
振り返れば、2010年時点でキャッシュレス決済比率はわずか13.2%で、その後も2011年は14.1%、2012年は15.1%と、普及は緩やかにとどまっていました。
当時の日本では「現金主義」が根強く、社会全体でのキャッシュレス化の推進は大きな課題でした。
こうした状況を背景に、政府は「未来投資戦略2017」や「キャッシュレス・ビジョン」を策定し、決済インフラの整備や制度設計を進めてきました。
その結果、2024年に42.8%と政府目標を前倒しでクリアし、キャッシュレス社会への道筋がより明確になったといえます。
しかし、国際的に見れば日本のキャッシュレス決済比率は依然として低水準のため、事業者・消費者双方の利便性を高めるさらなる施策が期待されています。
【関連記事】日本のキャッシュレス決済の変化と動向!店舗の集客・売上アップに向けた対策とは?
日本のキャッシュレス政策の歴史(2017→2025)
かつて低迷していたキャッシュレス決済比率をどのように高めてきたのか、これまでの政策の歴史を振り返ってみましょう。
未来投資戦略2017(2017年)― キャッシュレス社会の基盤づくり
「未来投資戦略2017」は、2017年6月に内閣府が策定した成長戦略です。
その中で「支払い方改革宣言」が打ち出され、日本のキャッシュレス社会実現に向けた数値目標が初めて明確化されました。
これを機に、政府主導のキャッシュレス推進が本格的に始まり、その後の施策へとつながりました。
目的・目標
本戦略では、日本経済の持続的成長と生産性向上を目指し、その一環として決済の高度化が重視されました。
キャッシュレス分野において提示された方針は以下のとおりです。
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キャッシュレス決済比率40%の達成を2025年までに前倒しで実現する
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店舗の現金管理コストを削減する
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観光インバウンドに対応した決済環境を整備する
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店舗の人手不足解消に貢献する
これらは単に決済の利便性向上を目指すだけでなく、社会課題の解決を狙った国家目標として策定されました。
主な取り組み
本戦略のキャッシュレス分野では、以下のような取り組みが示されました。
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クレジットカード、電子マネー、QR決済など多様な手段の普及
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中小事業者や地方店舗も導入できる低コスト環境の整備
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利用者が安心できる安全性と利便性の両立
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業界横断の協業による利用環境改善
これは事業者にとって、新しい決済サービスを導入するハードルを下げ、顧客満足度と競争力を高めるきっかけとなりました。
キャッシュレス・ビジョン(2018年) ― 普及率40%を目指したロードマップ
2018年4月、経済産業省は「キャッシュレス・ビジョン」として日本のキャッシュレス社会推進の方針を定めました。
産官学連携や推進協議会の設立など、オールジャパン体制でキャッシュレス決済の普及を進める枠組みが提案されています。
目的・目標
本ビジョンでは、キャッシュレスを「物理的な現金(紙幣・硬貨)を使用しなくても活動できる状態」と定義し、国内のキャッシュレス決済の促進を強く打ち出しました。
具体的な目的・目標は以下のとおりです。
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2025年の大阪・関西万博までにキャッシュレス決済比率40%を目指す
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将来的にキャッシュレス決済比率80%を実現する
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実店舗の無人化・省力化
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不透明な現金資産の見える化
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支払いデータの利活用による消費の利便性向上と活性化など
これらの成長加速をきっかけに、経済効率化や日本産業の国際競争力強化も狙う戦略となっています。
主な取り組み
「キャッシュレス・ビジョン」に基づく代表的な取り組みは、新たなキャッシュレス決済手段の導入促進です。
具体的には以下のような取り組みが国内で進められました。
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QRコードや生体認証などの新たな決済手段の普及活動
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中小店舗や地域商店街へのキャッシュレス決済導入支援
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決済事業者や金融機関、産学官が連携する「キャッシュレス推進協議会」の設立
国や地方自治体などが主体となるさまざまな施策により、「誰もが安心してキャッシュレスを使える環境構築」を目指しました。
その結果、店舗・施設でのインバウンド対応や省人化、データ活用が進み、現金中心だった決済対応からの脱却に前進したと言えます。
キャッシュレス・消費者還元事業(2019年~2020年)― ポイント還元で中小店舗を支援
経済産業省は、消費税増税(2019年10月1日)に伴う景気の冷え込みを緩和し、キャッシュレス決済の普及を促進する「キャッシュレス・ポイント還元事業」を開始しました。
目的・目標
この取り組みでは、キャッシュレス決済の導入コストを抑えると同時に、顧客体験の向上を図ることで、持続的なキャッシュレス普及の基盤を築くことを目指しました。
具体的な目的・目標は以下のとおりです。
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中小・小規模事業者によるキャッシュレス決済導入のハードルを下げる
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消費者にポイント還元を行い、支払いのキャッシュレス転換を加速する
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消費税増税による景気減速リスクを和らげ、経済全体の活性化につなげる
全国の中小・小規模事業者と多様な加盟店を巻き込み、消費喚起と生産性向上の両立を狙う取り組みとなっています。
主な取り組み
「キャッシュレス・ポイント還元事業」では、「消費者への還元」「決済端末の導入補助」「決済手数料の補助」などの施策が実施されました。
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中小企業や個人商店でキャッシュレス決済を利用した場合は5%還元
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フランチャイズ店舗などでは2%の還元
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加盟店決済手数料の補助(国が1/3, 決済事業者が1/3を負担等)
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決済端末導入費用を無償化
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クレジットカード・電子マネー・QR決済など広範な支払い方法に対象を拡大
2019年10月〜2020年6月までの9ヶ月間で、対象取引額は累計約8.5兆円に達し、約40億回ものキャッシュレス決済が行われました。その結果、総額約3,530億円分のポイントが消費者に還元されています。
期間中、登録加盟店は全国約115万店に拡大し、小規模店舗や飲食店などにもキャッシュレス化を進展させるきっかけとなりました。
マイナポイント事業(2020年~2023年)― マイナンバーカードを活用した普及策
「マイナポイント事業」は、総務省が2020年〜2023年にかけて実施したポイント還元策です。
目的・目標
「マイナポイント事業」では、主に以下の3つの目標が掲げられました。
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マイナンバーカードの普及促進
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キャッシュレス決済の利用拡大と消費行動のデータ化
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ポイント還元を通じた消費意欲の刺激
これらに加えて、デジタル社会の基盤づくりや、官民連携による「行政×民間サービス」のデジタル化も重視されました。
主な取り組み
「マイナポイント事業」は、大きく分けて2段階に分けて実施されました。
第1弾(2020年〜)では、マイナンバーカードの取得者を対象に、任意のキャッシュレス決済サービスでチャージや買い物をすると、最大5,000円分(付与率25%)のポイントがもらえる仕組みでした。
第2弾(2022年〜2023年)では、マイナンバーカードを健康保険証として利用する申請で7,500円分、公金受取口座を登録することでさらに7,500円分のポイントが付与されました。
これらの施策により、マイナンバーカードの取得や申請は大幅に増加し、MDD研究所の調査では「マイナポイントの認知度が83.1%」に達したことがわかっています。
さらに、設定先として多く選ばれたキャッシュレス決済サービスは「PayPay」「楽天カード」「WAON」でした。
インボイス制度(2023年)—適格請求書とキャッシュレスの関係
「インボイス制度(正式名称:適格請求書等保存方式)」は、2023年10月1日から導入された新たな消費税制度です。
目的・目標
インボイス制度は、事業者間取引において、正確な税額計算と納税管理を実現することを大きな目的としています。
本制度の主な目的は、以下の通りです。
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複数税率(8%・10%)下で消費税の仕入税額控除の適正化を図る
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税額計算の不正・ミスを防止し、納税の公正・透明化を図る
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適格請求書(インボイス)の発行と保存要件による取引証跡の明確化
さらに、紙ベースの経理からのデジタル化を後押しし、中小企業のDX推進効果にも期待されています。
主な取り組み
インボイス制度では、以下のようなルールが新たに設定されました。
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適格請求書を交付できるのは「登録を受けた課税事業者」のみ
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仕入税額控除を受けるには、仕入先のインボイス保存が必須
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少額取引(1万円未満)には、帳簿保存のみで仕入税額控除が可能な特例あり
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免税事業者が課税事業者となる場合、納税負担の軽減や補助金加算措置など事業者負担への配慮も導入
インボイス制度への対応は負担も伴いますが、取引の透明化や経理の効率化につながるメリットもあります。
事業者は制度の内容を正しく理解するとともに、早めに対応を進めることが求められます。
デジタル払い制度(2023年~) ― 給与のデジタル払い解禁
「デジタル払い制度」とは、2023年4月の労働基準法施行規則改正により、従来の「現金」や「銀行振込」に加え、電子マネーやスマートフォン決済アプリの口座を通じた賃金支払いが可能となった制度です。
厚生労働省の公式サイト「資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)」にて、新たな賃金の支払い・受け取り方法が公開されています。
目的・目標
「デジタル払い制度」の解禁は、以下の目標達成に寄与するとされています。
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2025年までにキャッシュレス決済比率40%を達成(将来的には80%を目指す)
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給与支払い手段の多様化による事業者・労働者双方の利便性向上
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オンラインでの迅速かつ柔軟な給与受け取り環境の構築
政府のキャッシュレス推進政策と連携することで、給与における従来の支払い方法にイノベーションをもたらすことを目的としています。
主な取り組み
本制度の解禁に伴い、厚生労働大臣は複数の資金移動業者に対してデジタル払いを認めました。
主な取り組み内容は以下のとおりです。
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PayPay株式会社、株式会社リクルートMUFGビジネス、楽天Edy株式会社などがデジタル払いに対応(2025年3月時点)
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資金移動業者の安全管理や利用者保護措置の厳格化
しかし、帝国データバンクによる調査(2024年10月)では、企業の約9割が「デジタル給与の導入予定がないと回答」していることがわかりました。
給与のデジタル払いの導入はまだ限定的ですが、業務負担やセキュリティリスクなどの課題が解決されることで、普及が進むと期待されています。
「EXPO 2025 大阪・関西万博」が全面キャッシュレスに対応
政府はキャッシュレス社会の実現に向けて、国際イベントや社会インフラを活用しながら普及を進めています。
特に大阪・関西万博は、次世代キャッシュレス社会の実証する場として大きな役割を担っています。
大阪・関西万博の開催概要と目的
世界約150カ国と地域が参加する「EXPO 2025 大阪・関西万博」は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとし、未来社会のモデルを体現するイベントです。
最先端技術や持続可能な社会の実現に向けた取り組みを世界へ発信する場として、位置付けられています。
政府は、デジタル技術とキャッシュレス決済を活用し、利便性・効率性・国際対応を兼ね備えた「次世代型社会インフラ」を示すことを狙いとしています。
キャッシュレス関連の取り組み
大阪・関西万博では、政府がキャッシュレス社会の推進を加速させるべく、以下のような取り組みを導入しています。
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全面キャッシュレスの導入(クレジットカード、QRコード決済、電子マネー、スマホアプリ決済など)
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70種類以上の決済ブランドに対応(海外ブランドを含む)
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大阪・関西万博オリジナルの電子マネー「ミャクペ!」を導入
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デジタルウォレットサービス「EXPO2025デジタルウォレット」の提供
大阪・関西万博では、会場内での飲食や買い物の支払いがキャッシュレス決済に限定されています。この試みは国際博覧会の歴史において初です。
さらに、電子マネー「ミャクペ!」や、キャッシュレス決済サービスの管理および活用方法の案内で活用できる「EXPO2025デジタルウォレット」の提供といった独自のキャッシュレス促進施策を実施しています。
全面キャッシュレスの狙い
大阪・関西万博では、現金を使わないスムーズな支払い体験を目指しています。
会場内でのすべての買い物やパビリオン利用の支払いにおいて、キャッシュレス決済に限定したことで、混雑緩和や待機時間の短縮を図ることが大きな目的です。
さらに、海外来場者に向けた多言語・多通貨対応により、グローバルな支払い環境を整備しています。
例えば、中国で広く利用される「WeChat Pay」や、東南アジア各国で普及する「Alipay+」などのQRコード決済サービスに対応し、国際的な決済ニーズに応えています。
これまで現金派比率が高かった日本にとって、「全員が現金を使えない」という環境で国民の意識変革を促すことも、全面キャッシュレスの重要な目的です。
【関連記事】訪日観光客に選ばれるWeChat Payの魅力とは?注目の機能「微信支付全球有礼」を解説
日本が目指すキャッシュレス社会と事業者が解決するべき課題
政府は、2025年6月までにキャッシュレス決済比率40%を達成し、将来的には80%という世界最高水準を目指しています。
「キャッシュレス・ロードマップ 2024」によると、2022年時点で韓国と中国がキャッシュレス決済比率80%以上をすでに達成しています。
今後、日本でもキャッシュレス社会の拡大が加速するなか、事業者は以下の課題に向き合い、その解決に取り組むことが事業成長につながると考えられます。
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ポイント還元だけではなく、「現金よりも便利・安心」と感じられる店舗体験を設計する
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決済手数料の負担軽減や入金サイクルの短縮など、キャッシュフローの負担を軽減できるシステムを導入する
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1台で複数の決済手段を処理できるオールインワン端末の導入で、システム管理コストと業務負担を軽減する
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多言語・多通貨対応のキャッシュレス決済システムを導入し、インバウンド消費の拡大に備える
これからのキャッシュレス決済では、ポイント還元のような利得性だけではなく、決済の利便性や効率性を消費者に認知してもらうことが大切です。
事業者はこれらの課題解決を着実に進めることが、成長市場で競争優位性を確保する鍵となります。
まとめ
日本のキャッシュレス政策と市場は、ここ数年で劇的な進化を遂げてきました。
2024年には、政府が掲げていた「2025年までにキャッシュレス決済比率40%」という目標を1年前倒しで達成し、その比率は42.8%に到達しました。
この背景には、「未来投資戦略2017」や「キャッシュレス・ビジョン」など、明確な数値目標とインフラ整備を伴う政策推進があったことが大きく影響しています。
しかし、韓国や中国と比較すると、キャッシュレス決済比率や決済コスト、オペレーションの効率性といった面で日本にはまだ大きな成長余地があります。
これからのキャッシュレス社会における事業の持続的成長には、決済手数料や運用面の負担軽減、インバウンド対応の強化などを実現することが重要です。
「インタセクト・コミュニケーションズ株式会社」では、今後のキャッシュレス社会に欠かせない国内・海外のQRコード決済ブランドを一括導入できる「IntaPay(インタペイ)」を提供しています。
導入・月額費用0円で、複数ブランドの加盟店申請からさまざまな端末への導入をサポートし、店舗のオペレーション効率化に貢献します。
また、訪日観光客に需要の高いQRコード決済も導入できるため、インバウンド対策の強化にも有効です。
マルチQRコード決済アプリ「IntaPay」を通じた集客やプロモーションのご相談にも乗れますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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