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免税の電子化とは?リファンド方式の変更点も解説

2021年に免税販売手続きの電子化が義務化され、免税店が行なう手続きが変更されました。また、2026年に導入される「リファンド方式」によって、免税販売の流れがさらに変わります。

本記事では、免税電子化制度の基本をわかりやすく解説しています。リファンド方式の仕組みについてもまとめていますので、免税の電子化やリファンド方式の変更点について理解する際の参考としてお役立てください。

免税販売手続きの電子化とは

2021年10月1日より、免税販売手続きの完全電子化が義務化されました。免税販売電子化の義務化は、日本国内の輸出物品販売場(免税店)で、訪日外国人旅行者や非居住者に免税販売を行なう事業者が対象となっています。

ここでは、電子化により手続きがどのように変わったかについて紹介します。

購入誓約書の作成・保管が不要

従来は紙の「購入者誓約書」を作成し、店舗で7年間保存する義務がありましたが、電子化後に廃止されました。電子データによる「購入記録情報」の記録・送信が、従来の誓約書に代わる手続きになっています。

購入誓約書の作成と保管が不要となったことで、店舗側の事務負担が軽減され、来店・購入者対応の効率化につながる制度変更です。

パスポートの写しの提出・保管が不要

電子化前は旅券(パスポート)の「写し」の提出・保管が必要でしたが、電子化により不要となりました。購入者の旅券等に記載された情報および購入記録情報は、インターネット回線などを通じ電子データによって、遅滞なく国税庁長官へ提供する仕組みに変わっています。

例えば、100万円を超えるような高額な販売を行なうときにおいても、旅券の写しを撮影・保管する義務がなくなりました。基本的には、パスポートリーダーなどの機器の準備があると便利ですが、手入力する方法でも問題ないとされています。

購入記録票の作成・提出が不要

紙による「購入記録票」の作成および税関等への提出が必要となっていたものが、電子化によって不要になりました。電子化後は、旅券等に貼付・割印していた手続きが廃止され、代わりに電子データによる記録・送信となります。

電子化によって店舗の手間や書類コストが削減され、非居住者購入者の手続きも簡略化されています。

購入者に対する必要事項の説明が必要

電子化後、店舗には購入者(非居住者)に対して、必要事項を説明する義務が新たに設けられました。購入した商品は国内で使えないことや、必ず海外へ持ち出す必要があることなど、免税利用における約束ごとを説明する必要があります。

説明は日本語および外国語で記載された書面の交付または提示のほか、口頭による説明という形でも可能とされています。

国税庁への購入記録情報の送信が必要

輸出物品販売場となる店舗は「購入記録情報」について、電子情報処理組織を用いて遅滞なく国税庁長官へ提供しなければなりません。

購入記録情報の提出には、店舗ごとに「提供方法等の届出書」を所轄税務署長に提出し、国税庁が定める「識別符号」の通知を受ける必要があります。こうした電子化による手続きに対応するためには、インターネット回線・電子証明書・専用システムなどの準備が必要です。

免税販売手続きの電子化の目的

これまでは、免税販売手続きにおいて書類の記入や購入記録票の貼付、割印などが必要でした。そのため、従業員だけでなく購入者にも手間がかかっていたといえます。

実際に2021年から電子化にしてみて、どのような効果があったのかについて見ていきましょう。

事務作業の負担軽減

紙による書類作成や貼付、書類の保管といった従来の手続きが不要になり、パスポートの読み取りや商品情報入力、電子送信などが端末操作で完結できるようになりました。店舗スタッフの作業時間が短縮されることで、繁忙期のインバウンド対応にも余裕が生まれます。

また、店舗が購入記録を電子データとして保存し、すみやかに国税庁に送信できるため、これまで手作業で行なっていた書類整理や提出作業も大幅に簡素化されています。

入力ミスや記入漏れの防止

手書きや紙による運用では「記載漏れ」や「割印忘れ」「貼り間違え」といったミスが発生しやすい状況でした。

こうした運用を電子化したことにより、所定項目を端末で入力・管理できるようになり、必要情報の抜けや誤りを確認しやすくなったため、手続きのミスの防止やトラブルの削減につながっています。

旅行者の利便性向上による消費拡大

免税手続きがスムーズになれば、待ち時間や書類作成の手間、パスポートへの貼付といった物理的・心理的なハードルを下げることが可能です。

これにより訪日外国人旅行者が免税店を利用しやすくなり、免税売上の増加や観光消費の拡大が期待できます。

不正利用の抑制

国税庁では、「不正な免税110番」の通報窓口を設けるなど、免税販売制度の監視と対応を強化しています。

免税品の転売目的での購入や、ブローカーを介した不正な免税販売などが近年問題視されています。手続きの電子化やデータ保存の義務化により、「誰が」「何を」「いつ」免税で購入したのかという情報が記録として残りやすくなり、追跡・監査が行ないやすくなりました。その結果、不正利用のリスクを抑える効果が期待されています。

電子化後の免税販売手続き

ここでは、2021年に導入された電子化後の免税販売手続きの流れを詳しく解説していきます。

【外国人旅行者】パスポートなどを提示

まずは、免税販売を行なうために、購入者が「非居住者」であることを旅券(パスポート)等で確認します。旅券には滞在資格(短期滞在など)や上陸年月日等が記載されている必要があります。

購入時に提示された旅券情報は、店舗側が「購入記録情報」として電子的に記録・送信する対象となるため、旅券番号・購入者名・購入日などの正確な取得が必要です。

【免税店】購入者に必要事項を説明

店舗側は、購入者(非居住者)に対して、免税に関する必要事項を説明する必要があります。

おもな説明内容は以下のとおりです。

・購入した物品が輸出目的であること

・出国時に税関で旅券等の提示が必要であること

・物品を持ち出さなかった場合には消費税等の追徴の可能性があること

説明は日本語だけでなく、訪日外国人旅行者向けに外国語対応できる体制や人員を配置することが望ましいとされています。

【免税店】購入記録情報を国税システムに送信

次に、店舗は「購入記録情報」を、電子情報処理組織を使用して遅滞なく国税庁長官へ提供することが必要です。提供方法には、店舗自身がシステムを準備して「自社送信」する方法と、承認送信事業者を利用して「他社送信」する方法の2種類があります。

通信手段としては、一般的なインターネット回線のほか、IP-VPNなどのセキュリティを確保した回線なども利用でき、送信時には安全性の確保が求められます。

【関連記事】承認送信事業者とは?国税庁の免税電子化制度や登録方法、選び方を徹底解説

【外国人旅行者】税関でパスポートなどを提示し出国

購入した免税物品を日本から持ち出す際、出国時に税関で旅券(パスポート)の提示や物品の確認を受けることで、免税扱いの適用が最終的に確かめられます。

購入した免税品を持ち出さなかった場合や、国内で使用したと判断された場合には、消費税等を支払わなければならない可能性があります。

また、税関では、店舗が送信した「購入記録情報」を用いることができる仕組みとなっており、制度の公平な運用を支える一要素となっています。

電子化に対応するために必要なこと

電子化に対応しないと免税販売を行なうことができなくなるため、すべての対象事業者にとって導入が必須となっています。

電子化対応には「インターネット回線等により、購入記録情報を遅滞なく国税庁長官に電子的に送信する仕組み」を整えることが必要です。

インターネット回線などの用意

免税販売を行なう事業者は、購入記録情報を電子的に国税庁へ送信するために「インターネット回線等に接続可能な環境」の準備が必須です。通信手段としては、インターネット回線のほか、セキュリティが高いIP-VPN回線を用いるケースもあるため、回線の敷設や契約に時間を要する場合があります。

さらに、送信システムでは電子証明書(クライアント証明書)を用いた認証・暗号化通信の対応も求められています。そのため、できるだけ余裕を持って手続きを進めるようにしましょう。

届出書の提出

「輸出物品販売場における購入記録情報の提供方法等の届出書」は、免税販売を行なう輸出物品販売場ごとに提出が義務づけられています。届出がない場合、免税販売を続けられない可能性があるため注意が必要です。

届出書を提出すると国税庁から販売場ごとの識別符号が通知され、この識別符号を販売時に送信する「購入記録情報データ」に含める決まりになっています。提出先は納税地を所轄する税務署で、電子(e-Tax)または紙の書面で申請可能です。

購入記録情報の提供方法の決定

購入記録情報の提供方法には以下の選択肢があり、自社の体制やかかるコスト、運用負荷などを勘案して決定することが求められています。

1.自社でシステムを構築して国税庁へ直接送信(自社送信)

2.承認送信事業者を利用して送信(他社送信)

提供方法を決定したら、対応するソフトウェアやアプリケーションの選定と導入・テスト運用を早めに実施して、トラブルを防ぎましょう。

【関連記事】承認送信事業者とは?国税庁の免税電子化制度や登録方法、選び方を徹底解説

免税電子化システム事業者が提供しているサービス

店舗自身で送信体制を整えるのが難しい場合には「送信代行」「システム利用契約の案内」「運用支援」を含めた委託サービスが提供されています。

具体的には、以下のようなサービスが提供されているため、自社で対応可能か、予算なども踏まえて検討するのがおすすめです。

端末による旅券情報の読み取り

専用機器やスマートフォン・タブレット端末などのカメラ機能、パスポートスキャナーなどを使い、旅券情報を読み取れるようになるサービスです。旅券読み取り機器等は、免税電子化システム事業者からレンタルできる場合もあります。

読み取り機器では、旅券番号・国籍・上陸日などのデータ取得が可能です。読み取りデータをそのまま「購入記録情報」生成に反映できるよう、自動化や連携機能の整備が支援されているものもあります。導入機器に関する保証や、故障対応についても事前に確認しておくと安心です。

購入記録情報の生成

旅券読み取りデータおよび販売情報から、必要な「購入記録情報(購入者の旅券等の情報と購入内容)」を電子データとしてまとめるサポートです。

販売時のPOSデータ連携や、免税対象品目の判定などを含むものもあるため、自社で必要な機能を持つシステムを選択するとよいでしょう。導入時には、サポート体制やバックアップ環境などのチェックも必要です。

購入記録情報の送信

生成された購入記録情報を、インターネット回線などを通じて国税庁の免税販売管理システムへ遅滞なく電子送信するための委託サービスです。

現状、国税庁が運用するe-Taxや免税販売管理システムにおいては、購入記録情報を送信する機能はありません。そのため、日本においては以下の方法を推奨しています。

1.国税庁が公開する「免税販売管理システムAPI仕様書」に沿って、自社で送信システムを構築する

2.民間事業者が販売・提供する購入記録情報の作成・提供機能を備えたソフトウェア・アプリケーション等を利用する

3.承認送信事業者に送信を委託する

購入記録情報の送信を便利にするシステムの導入や委託を検討している場合、送信完了後のログ管理や通信障害時の代替手続き、データ保管状況なども確認しておくとよいでしょう。

2026年からは「リファンド方式」への対応も必要

2026年11月から、現行の「購入時免税方式」に代わり、購入時に消費税込価格で販売し、出国時の持ち出し確認を受けたあとに消費税相当額を返金する「リファンド方式」へ移行します。新制度でも引き続き、免税店(販売場)は旅券番号や購入品目、金額等の購入記録情報を、電子情報処理組織を用いて遅滞なく提供・保存することが必要です。

また、税関で旅行者の免税品持ち出し確認が済んだかどうかを示す「税関確認情報」について、免税店側で確認する必要があります。これは国税庁の免税販売管理システムからAPIで取得可能です。

この税関確認情報を用いて「返金可能かどうか」および「免税売上として計上すべきかどうか」を判断することとなります。税関では、購入日から90日以内に出国した旅行者を対象として、持ち出しの確認を実施します。

さらに、「リファンド方式」への対応にともない、購入記録情報のデータ仕様がver3へ更新されます。これにより、旅券番号や取引番号、購入金額などの基本情報項目が明確化・標準化され、税関確認情報との連携や返金処理のための情報照合がしやすくなるでしょう。

免税手続きの「取消」や「訂正」の方法も統一され、取り消したデータと対象データを確実に結びつける仕組みが必要になります。こうしたシステム連携(API)に対応できるよう、免税店側のシステムも仕様更新が必要です。

また、販売時の手続きや店舗運用も変わります。具体的には、以下の準備をしておきましょう。

1.免税対象者への制度説明や旅券読み取り、購入記録情報の送信フォーマット対応や電子保存体制を整備する

2.店舗の販売価格表示を「税込価格」に切り替え、還付手続きが出国時に行なわれる仕組みに対応する

3.税関では購入日から90日以内に出国する旅行者を対象に免税品の「国外持ち出し確認」を行なうため、出国までの期間管理や確認方法を整える

【関連記事】【令和8年11月】新免税制度(リファンド方式)とは?変更点やシステム対応の注意点を解説

まとめ

免税手続きの電子化は、すでに2021年10月1日から全店舗で義務化されており、紙の手続きだけでは免税販売を行なえなくなっています。さらに2026年11月からはリファンド方式による免税処理への移行が予定され、運用ルールが大きく変化する予定です。

こうした制度改定には早期対応と早期準備することで、店舗運営の信頼性と効率化につながるでしょう。

また、弊社インタセクトコミュニケーションズ株式会社は「承認通信事業者資格」を取得しており、免税電子化システム(InTaxFree免税リファンドシステム)の提供に対応しています。免税店電子化システムの構築支援も可能です。

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※本記事は執筆時点の情報に基づいています。最新の制度改正や詳細については、必ず公式情報をご確認ください。

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