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開業届の提出方法とは?オンライン申請とオフライン申請の流れを徹底比較
飲食店や小売店、美容室などを個人で開業する際、開業届の提出や各種手続きを効率的に進めたいと考える方は多いでしょう。
近年は、自宅からでも簡単に手続きができるオンライン申請が普及しており、紙ベースの従来手続きと比べて大幅な効率化が可能になっています。オンライン申請とオフライン申請には、それぞれメリット・デメリットがあるため、開業準備の初期段階で正しく理解しておくことが重要です。
本記事では、開業届の提出方法から申請の具体的な流れ、手続きの注意点までわかりやすく解説します。
開業届とは
開業届とは、所得税法第229条に基づき、個人で事業を開始する際に税務署へ提出する届出書類で、正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。
所得税法では、事業開始日から1ヶ月以内の提出が義務付けられています。
開業届を提出すると、屋号付きの銀行口座を開設できるほか、青色申告や補助金の申請にも対応できるようになります。
提出しなくても罰則はありませんが、信用面や税務上のメリットを得るためにも、提出が推奨されています。
近年では、インターネットを通じて手続きが完結するオンライン申請が普及し、自宅やオフィスから簡単に手続きが完了できるようになっています。
開業届の提出方法
開業届の提出方法には、大きく分けて「オンライン申請」と「オフライン申請」の2種類があります。
自身のライフスタイルや事業の準備状況に応じて、最適な申請方法を選ぶことが大切です。
オンライン申請
オンライン申請とは、e-Taxやe-Govなどの電子申請システムを使って、インターネット上で開業届を提出する方法です。
マイナンバーカードやマイナポータル連携を利用することで、税務署に出向くことなく、24時間いつでも手続きが可能になります。
近年では、パソコンやスマートフォンから簡単に申請できることから、忙しい個人事業主やITに慣れた若年層を中心に広がっています。
オフライン申請
オフライン申請とは、紙の開業届を税務署に直接持参するか、郵送で提出する従来の方法です。
国税庁の公式サイトから届出用紙をダウンロードし、必要事項を記入して、手書きまたは印刷した書類を提出します。
オンライン申請に比べて手間はかかりますが、パソコンやスマホの操作に不慣れな方でも手続きしやすく、対面で確認が取れる安心感があります。
ただし、税務署の窓口が開いている時間に訪問する必要があるなど、時間的な制約がある点は留意が必要です。
オンライン申請の手順とポイント
個人事業の開業届出や所得税の青色申告承認申請書など、税務に関する手続きは、e-Taxやe-Govを利用してオンラインで行うことができます。
ここでは、e-Taxやe-Govでのオンライン申請の手順とポイントを解説します。
事前準備
オンラインで開業届を提出するには、申請に必要な環境を整える必要があります。
マイナンバーカードを利用する場合は、本人確認用の電子証明書と対応アプリ、スマートフォンまたはICカードリーダーが必要です。
スマホにNFC機能(近距離無線通信)があれば、ICカードリーダーは不要です。
なお、マイナンバーカードを持っていない場合でも、税務署で本人確認を受け、「ID・パスワード方式」による申請が可能です。
必要書類
開業内容や事業規模に応じて、以下の書類提出が求められます。
個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)
所得税の青色申告承認申請書
給与支払事務所等の開設届出書
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
青色事業専従者給与に関する届出書
「所得税の納税地の変更に関する届出書」
「消費税の納税地の変更に関する届出書」
これらの提出書類は事業内容や運営体制によって異なるため、提出漏れがないよう早めの確認が大切です。不安な場合は、税務署や専門家への相談も検討しましょう。
e-Taxでの申請フロー
e-Taxを活用すると、開業届や青色申告承認申請書などをオンライン上で簡単に提出できます。
以下でe-Taxを使った申請の流れをわかりやすく解説します。
1.利用者識別番号の取得
国税庁の「e-Tax開始届出書作成・提出コーナー」から、利用者識別番号を取得します。
開始届出書の種類を選択し、、「マイナンバーカード方式」または「ID・パスワード方式」のいずれかを選び、必要事項を入力して申請します。
現在はどちらの方式も利用可能ですが、ID・パスワード方式は将来的に廃止が予定されているため、継続利用を見据えるなら「マイナンバーカード方式」の選択がおすすめです。
申請完了後、e-Taxの利用に必要な16桁の利用者識別番号と暗証番号が発行されます。
2.電子証明書と申請環境の準備
申請者本人であることの証明は、「マイナンバーカードに搭載された電子証明書」または「ID・パスワード(利用者識別番号と暗証番号)」で行います。
【マイナンバーカードがある場合】
使用端末に合わせて以下の準備を行います。
パソコンの場合:ICカードリーダライタ
スマートフォンの場合:NFC対応端末とマイナポータルアプリ
必要に応じて「JPKI利用者ソフト」のインストールも行います。
【マイナンバーカードがない場合】
最寄りの税務署にて、e-Taxの開始届出書と本人確認を行い、ID・パスワード(利用者識別番号と暗証番号)を取得します。
ID・パスワードの取得後は、パソコンやスマホからe-Tax申請が可能です。
3.e-Taxソフトの導入
国税庁e-Taxサイトからe-Taxソフト(インストール版またはWEB版)をダウンロードし、起動します。
開業届の提出には、「所得税」税目のモジュールを追加インストールする必要があります。
4.申請データの作成
e-Taxソフトの「申請・申告等一覧」から「個人事業の開業・廃業等届出書」を選択し、氏名・住所・屋号・事業内容などを入力します。
なお、青色申告の承認申請やその他の書類も提出する場合は、それぞれ該当の書類を個別に選択して申請データを作成する必要があります。
5.電子署名の付与と申請データの送信
入力内容を確認後、以下の手順で申請データを送信します。
【マイナンバーカードがある場合】
署名用(6桁)または認証用(4桁)のパスワードを使用し、電子署名を付与して申請データを送信します。
【マイナンバーカードがない場合】
ID・パスワード方式でも、開業届の提出には原則として電子署名は不要です。
ただし、青色申告承認申請書など一部の書類では、電子署名が求められる場合があります。
このような書類を提出する場合は、マイナンバーカード方式に切り替えるか、郵送・窓口での提出を検討しましょう。
6.受付通知の確認と控えの保存
申請データ送信後、e-Taxのメッセージボックスに受付通知が届きます。
控えとして有効なため、PDF保存や印刷して保管してください。
e-Govでの申請フロー
e-Govは、雇用保険や社会保険など国税以外の各種行政手続きに対応したオンライン申請ポータルです。
以下でe-Govを使った申請の流れをわかりやすく解説します。
1.電子証明書の取得
e-Govでの電子申請には、電子証明書の取得が必要になります。
【マイナンバーカードがある場合】
マイナンバーカードに搭載されている「署名用電子証明書」を利用するのが一般的です。あらかじめマイナンバーカードを取得し、暗証番号(6桁~16桁)を控えておくとスムーズです。
【マイナンバーカードがない場合】
マイナンバーカードの代わりとして、「商業登記に基づく電子証明書」や、「日本電子認証など他の認証局が発行する電子証明書(ICカード型またはファイル型)」を利用することも可能です。(参考元:法務省|電子証明書取得のご案内)
必要に応じて、認証局にて発行手続きを事前に済ませ、証明書のセットアップをしておきます。
2.アカウント作成またはログイン
e-Govアカウントの作成、またはGビズIDやMicrosoftアカウントでログインします。
セキュリティ対策として2要素認証の設定が推奨されています。
3.ブラウザ設定の確認
申請画面が正常に表示されるよう、ブラウザのポップアップブロックを解除し必要なスクリプトが実行できるようにします。
4.アプリケーションのインストール
e-Gov電子申請用のアプリ(Windows/macOS対応)をパソコンにインストールします。
ソフトウェアのインストールには、使用するパソコンに管理者権限が必要な場合があります。
インストールが制限されている場合は、事前に確認しておきましょう。
5.申請書作成と電子署名の付与
マイページの「申請手続き」から必要事項を入力し、書類をアップロードします。
さらに、以下の手順で申請データに電子署名を付与すると、必要に応じて審査が行われます。
【マイナンバーカードがある場合】
マイナンバーカードに搭載された電子証明書を利用し、電子署名を付与します。このとき、署名用パスワード(6〜16桁)が必要です。
【マイナンバーカードがない場合】
自身で取得した認証局発行の電子証明書(ICカード型・ファイル型)を使って、電子署名を付与します。
証明書の認証方法やセットアップ手順は、所定の証明書の指示に従う必要があります。
6.審査結果の確認と保存
審査結果は事前登録したメールアドレスに届きます。
受理証などの公文書はe-Gov上でダウンロード・保存可能で、申請状況の確認も同画面から行えます。
オフライン申請の手順とポイント
パソコン操作やマイナンバーカードの準備に不安がある方には、紙の書類を使って提出するオフライン申請がおすすめです。
税務署の窓口に直接持参する方法と、郵送で提出する方法の2種類があり、いずれもオンライン環境を必要とせずに手続きを進められます。
事前準備
オフラインで開業届を提出するには、あらかじめ紙の申請書を用意し、提出方法(郵送または窓口)を選ぶ必要があります。
開業届は、国税庁の公式サイトからダウンロードして印刷するか、最寄りの税務署で直接受け取ることが可能です。
なお、2025年1月以降、税務行政のDX推進に伴い、税務署で提出した書類の控えに収受印が押されない運用に変更されました。そのため、提出記録の保管方法をあらかじめ決めておくと安心です。
必要書類
オフライン申請には、以下の書類が必要です。
個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)
本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
マイナンバーが確認できる書類(マイナンバーカード、通知カード、またはマイナンバー付きの住民票など)
返信用封筒と切手(郵送提出の場合)
印鑑(必要な場合のみ)
書類の不備があると申請が受理されず、再提出の連絡が来るまでに時間がかかることがあります。
特に郵送の場合は、投函前に内容を十分にチェックしておくことが重要です。
税務署での申請フロー
書類の記載内容に不安がある方は、税務署の窓口で直接確認しながら提出する対面申請がおすすめです。
以下に税務署での申請の流れをわかりやすく解説します。
1.書類を準備する
あらかじめ必要事項を記入した開業届、本人確認書類、マイナンバー確認書類を用意します。
2.税務署へ持参する
納税地を管轄する税務署に平日の開庁時間内に訪問します。
3.本人確認と書類提出
窓口で本人確認を受け、開業届を提出します。不備があればその場で訂正指示が受けられます。
4.控えを受け取る
控え用の書類に受領証や受理リーフレットが添付される場合があります。収受印は押されないため、控えの保管には注意が必要です。
5.時間外提出も可能
税務署には時間外収受箱が設置されており、閉庁時間後や土日祝日でも提出が可能です。ただし、その場合は控えを受けることはできません。
郵送での申請フロー
遠方に住んでいる場合や、税務署に出向く時間が取れない場合には、郵送での申請が便利です。
以下に郵送申請の流れをわかりやすく解説します。
1.書類の作成
国税庁の公式サイトから開業届をダウンロードし、提出用と控え用の2部を作成します。
2.必要書類のコピーを同封
本人確認書類とマイナンバー確認書類のコピーを用意し、申請書と一緒に添付します。
マイナンバーカードをお持ちの場合は、表裏両面のコピーで本人確認書類およびマイナンバー確認書類として兼用可能です。
3.返信用封筒の同封
控えの返送を希望する場合は、切手を貼り、自分の住所を記載した返信用封筒を忘れずに同封しましょう。
4.適切な方法で郵送する
開業届は「信書」に該当するため、普通郵便、簡易書留、レターパックなどで日本郵便のサービスで郵送してください。
宅配便は信書の送付手段として法律上認められていません。
5.送付後のフォローアップ
書類に不備があると再提出になるため、記入ミスや漏れがないか事前に確認しましょう。可能であれば提出前に専門家にチェックを依頼するのも効果的です。
オンライン申請とオフライン申請のメリット・デメリットを比較
開業届のオンライン申請とオフライン申請には、それぞれにメリット・デメリットがあります。
オンライン申請は時間や場所を問わず、手続きができる利便性がある一方で、マイナンバーカードや専用ソフトの準備など一定のIT環境が必要です。
オフライン申請は直接職員に相談しながら進められる安心感がありますが、作成の手間や時間がかかる点が大きなデメリットとなります。特に2025年1月以降、控えに収受印が押されないなど運用の変更もあるため、選択にあたっては最新の情報も踏まえて検討することが重要です。
以下に、それぞれの提出方法の特徴を表にまとめました。
提出方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
オンライン申請 | ・24時間いつでも申請可能 ・非対面で完結 ・紙の印刷や郵送が不要 |
・マイナンバーカードや環境設定が必要 ・パソコン操作やスマホ操作に慣れが必要 |
オフライン申請(窓口提出) | ・職員に相談しながら手続きできる ・その場で書類の確認・修正が可能 ・提出完了の安心感がある |
・平日昼間のみ受付 ・混雑時は待ち時間が発生 ・控えに収受印が押されない(2025年以降) |
オフライン申請(郵送提出) | ・自宅から提出可能・閉庁日や時間外でも投函できる・非対面で気軽に送れる | ・郵送費や封筒のコストがかかる ・書類紛失リスクあり ・控えの返送に時間がかかる |
開業届提出後の注意点
開業届を提出しただけでは、すべての準備が完了したわけではありません。
開業後には、税務・会計・各種届出など、追加で対応すべき手続きがあります。これらを見落とすと、罰則や損失につながる可能性もあるため、チェックリスト形式で整理しておくことをおすすめします。
青色申告を希望する場合、開業日から2ヶ月以内に「青色申告承認申請書」を提出する
今後の資金調達や行政手続きに備えて、証明書類や控えを整理・保管する
帳簿の形式や保存ルールを確認し、適切な記帳体制を整える
売上や経費の記録は開業日当日から始め、会計ソフトなどを活用して日々管理する
開業前の準備段階で発生した支出についても、条件を満たせば経費として計上できる可能性があるため、領収書を保管しておく
これらの注意点をおさえることで、開業後も安心して事業を進めることができます。
開業準備の疑問を解消|よくある質問まとめ
ここからは、開業準備において、多くの人が疑問に思いやすいポイントについて、よくある質問とその回答を紹介します。
Q1. 開業届を提出すると、屋号付きの銀行口座は必ず作れますか?
A1. 開業届を提出することで屋号を持つことは可能ですが、屋号付き口座の開設が必ずできるわけではありません。
銀行によっては、開業届のほかに追加書類や審査が必要な場合があるため、事前に各金融機関の条件を確認しておきましょう。
Q2. 開業日以降に開業届を提出した場合、ペナルティはありますか?
A2. 開業届の未提出や遅延に対して直接的な罰則はありません。
ただし、青色申告の適用や各種補助金申請など、税務・行政上のメリットを受けられなくなるリスクがあります。なるべく速やかに提出することが望ましいです。
Q3. 開業届はオンライン・オフラインどちらで提出した方が良いですか?
A3. オンライン申請は24時間対応・自宅で完結という利便性が大きな魅力です。
ただし、e-Taxやe-Govを使用するには、マイナンバーカードや専用ソフトの準備が必要になります。
パソコンやスマホでの操作が苦手な方や窓口で直接相談しながら進めたい場合は、税務署への持参または郵送によるオフライン申請がおすすめです。
まとめ
開業届は、個人で事業を始める際に必要不可欠な手続きです。
近年はe-Taxやe-Govなどを利用したオンライン申請の利便性が大きく向上しており、24時間いつでも申請可能で、紙の印刷や郵送も不要というメリットがあります。
一方、紙によるオフライン申請も根強いニーズがあり、パソコンやスマホ操作に不安のある方や直接職員と相談しながら進めたい場合には窓口または郵送によるオフライン申請も有力な選択肢です。
どちらの方法にもメリット・デメリットがあるため、自身のライフスタイルや開業準備の状況に応じて最適な方法を選ぶことが大切です。
また、開業届の提出後には帳簿の管理体制や青色申告の申請、各種届出など、事業を安定して運営していくための対応が求められます。
開業準備の一環として、お客様にとって利用しやすい決済手段を整えておくことはとても大切です。IntaPayでは、開業前の段階からご相談いただけますので、安心して事業をスタートできます。
万全な準備と情報整理を行い、安心して開業後の事業をスタートさせましょう。